船を置く場所には、いくつもの呼び方があります。県が定めた小型船舶用泊地、ボートパーク、フィッシャリーナ、マリーナ、漁港の一角。ankaa map では、この場所を県ごとに一つずつ調べて、いま 1,119 か所を一覧にしています。
調べていて分かったのは、それぞれの県に資料はあるのに、県をまたいで通して見られるものが無いということでした。呼び方が違い、整え方が違い、数え方も違います。
整え方は、県によって重心が違います
放置艇への対応は、国が方向性を示し、それを受けて県が基本方針を作ります。同じ枠組みから出発しても、出てくる形は県によって違っていました。港や漁港の数、もともとある岸壁や係船環の量、放置艇の規模。条件が違えば、選ぶ手立ても変わります。
一つは、すでにある岸壁を「泊地」に指定する形です。既存の岸壁や係船環を小型船舶用泊地として指定し、使用の許可と使用料で整えていきます。広島県・岡山県・香川県では、この形が広くとられています。広島県では令和 5 年 4 月から係留保管場所の届出が義務になり、令和 7 年 4 月から小型船舶用泊地の使用料の納付が始まりました。岡山県は、水域の占用を受けている区画の一覧を公表しています。この形では、場所の数が多くなります。いっぽうで問い合わせ先は県や市の担当課で、場所ごとに管理する人がいるわけではありません。
もう一つは、施設を整えて、運営を委ねる形です。ボートパークやフィッシャリーナとして整備し、指定管理者や業務受託というかたちで運営を外に委ねます。兵庫県や大阪府では、こちらに重心があります。受け皿は一種類ではありません。民間のマリン事業者であったり、特定非営利活動法人であったり。この形は場所の数が絞られるかわりに、問い合わせ先と管理する人がはっきりしています。
どの県もどちらか一方、ということではありません。同じ県のなかに両方があります。違うのは、どちらに重心があるかです。
国の調査も、同じ二つで分けています
水産庁と国土交通省の令和 4 年度プレジャーボート全国実態調査では、港湾・河川・漁港で確認された船は 14.5 万隻。そのうち手続きを行わずに置かれている放置艇が 5.6 万隻(約 39%)、許可を得て係留・保管している船が 8.9 万隻(約 61%)でした。
この許可を得ている船の内訳が、上の二つとほぼ重なります。マリーナやボートパークなど専用に整備された「マリーナ等施設」と、既存の施設を改修しないまま係留・保管の場所として認めている「マリーナ等以外施設」。小型船舶用泊地は、後者に入ります。
平成 30 年度と比べると、放置艇は 1.4 万隻減りました。いっぽうで許可を得ている船の数は、ほぼ横ばいです。内訳で増えていたのは、後者の「マリーナ等以外施設」だけでした。同じ期間に、確認された船の数そのものも 1.5 万隻減っています。
数えられるのは、場所の数だけです
県ごとの資料が揃っても、その数をそのまま比べることはできません。「一か所」の大きさが、県によって違うからです。岸壁を一区画ずつ指定している県では、小さな区画も一か所と数えます。施設としてまとめている県では、何百隻も入る施設が一か所です。同じ「100 か所」でも、中身はまるで違います。
ですから、この一覧の 1,119 という数も、場所の数であって、受け入れられる船の数ではありません。この記事に県ごとの数を載せていないのも、そのためです。こちらが把握しているのも公表資料から確認できた範囲で、県ごとに調べ終えた度合いも違います。
通して見えるものが、まだありません
それぞれの県はきちんと公表しています。けれども、県をまたいで同じ形で見られるものは、いまのところありません。船は県境を越えて動きます。船を置く場所の情報は、県ごとに分かれたままです。
ankaa map が県ごとに一つずつ調べているのは、そのためです。お住まいの地域の泊地が載っていない、載っているけれど中身が違う。そういうときは、教えていただけるとありがたいです。
出典:水産庁・国土交通省「令和 4 年度 プレジャーボート全国実態調査」(令和 5 年 8 月公表。隻数は同調査の公表値で、万隻の単位に丸められています)/各県の公表資料。係留場所の数は 2026 年 9 月に ankaa map が確認できたものです。